迷宮神話から新たな実在の創造へ

「テウルギアのタロット」


テウルギアの神殿体系の実践と「迷宮神話」

 

 トートタロットが重視する神話の基本的な形態は、人間の歩む道を象徴する「迷宮神話」である。迷宮神話とその痕跡としての迷宮図が、古代から人間が生き方を求めて成熟と変容を実現した、自己理解の内容の図像表現と捉えたからである。

 

 迷宮(ラビリントス der Labyrinthos)は、外部への開口部を持つ円形または正方形の線の幾何学図形で表される。その線は、人生の生き方を求めてたどる通路と境壁を表すと考えられる。具体的な迷宮図は、紀元前13世紀頃から現われてくると言われる。

 最も有名な迷宮神殿は、クレタ島のミノス王のために作られたとされる怪物ミノタウロスの「牢獄」、「ダイダロスの館」と呼ばれるものである。

 

 

迷路とは、行っても途中で迷って決して戻ることのできない道を言い、迷宮は必ず戻れる道を言う

 迷宮の通路の特徴は、「迷宮の神話学」では次のように列挙されている。

 

 1. 十字路がないので、通路を選択する余地がない。

  ⇨ 迷いが生まれる隙間がないほど、生きる道をギリギリに

  探求をすることを象徴する。

 

 2. つねに振り子のように180度方向転換する。

   日々の意識と人生への態度の「死と再生」が起こること。

  知識や情報に振り回されるのではなく、毎日の「新生」、

  毎日のタロットの霊の中への誕生が鍵である。

 

 3. 最大限に迂回して、迷宮を歩む者は内部空間全体を歩く。

   古代神話の「イシスの探索」のように、究極まで歩くこと

  によってオシリス(取り組むべき問題点と解決策)が見つかること。

 

 4. 迷宮を歩む者は、迷宮の中心の側を繰り返し通過する。

   恐怖、不安、獣性を残りなく克服することによって、迷宮を突破すること。

 

 5. 通路は一本道であり、必ず中心に至る。

   これは、タロットの霊 Full とともに歩む道行きだからである。必ず中心に至る。

 

 6. 迷宮の中心から、ふたたび唯一の出口への通路として、外部へ出れる。

   迷宮神話に秘儀参入することは、いろいろなものを漁ることではない。

 

 

 

 

   イニシエーション(通過儀礼)としての迷宮

 

 迷宮に入る者は常に迷宮の中心を意識しながら全過程を歩み通し、やがて中心に至る。その中心で、迷宮への参入者は内部回路全体を歩き通したことによって、己の過去または内面の本質と向き合わされる。

 

 わたしたちが生きているこの世界は、ミノタウロスという中心を巡る迷宮なのである。迷宮に歩み入る者は、実は自分自身の中心を巡って歩まされ、自分の中心とのつき合い方を学ばされ、自分の本質をすべての側面から知らされる。

 迷宮の中心に到達できた者は古い人間の意識状態に死に、完全に別の意識状態になって、古い人間の意識が完全に停止した状態で帰路につく。これは参入者の身に起る、「死と再生」の概念としてトートタロットの象徴の中に取り入れられている。

 

 しかし、この新たな「無の意識状態」も、次の段階(アリアドネの絶海の孤島、「存在の変容」段階)では死に、「タロットの霊」における完全な「存在の変容」が起こる。これが、第2アイオーン(人間の救済の時代)から第3アイオーン(神と人間の共同作業による、天地創造の第8日目以降が始まる時代)へのシフトなのである。

 

 聖杯探求では、迷宮神話のアリアドネに相当するのは、聖杯の騎士パーシヴァルの妹ディンドレインです。彼女はパーシヴァルの妹なので、最初から聖杯の騎士と一緒にいるはずなのですが、実際には騎士が聖杯にいよいよ近づく段階で現れます。それは、聖杯の騎士とはいっても、まだまだ最初の探求の段階では、探求は騎士の個人的な欲望に過ぎないからです。そして、騎士の探求が成熟して魂の目覚めが起こり、聖杯の探求が本来の聖杯の持つ意味に近づくと、彼女は騎士の前に姿を現します。

 

 つまり、ディンドレインもアリアドネも、探求者の「魂の象徴」なのです。聖杯を探求する者たちの魂が目覚め、探求者たちの憧れのような単なる欲望からではなく、本当に人間として生きる真実を求めようと魂が目覚めるとき、ディンドレインは現れて来ます。しかも、さらに人間としての魂の欲求の限界を探求者たちに自覚させるために、彼女は死にます。彼女の死によって、聖杯の探求者たちは「霊」に目覚めます。 地上に執着して、地上のものへの欲望から離れられない人間の魂を、霊の次元へ救うのです。

 

 

 探求者たちが霊の次元に目覚め、聖杯に到達して「聖杯の騎士」になると、新たな段階が起こります。それが、「救済の時代」から「創造の時代」へという変化です。今までの古い意識の中では十分に自覚することができなかった、新たな精神的時代が生まれようとします。それがトートタロットが指摘した「ホルスのアイオーン」の時代が始まらなければならないという意味であり、わたしたちが今はっきりと心に聞き取る「第3のアイオーン」の足音が近づいているという自覚です。それは、7日間で終わった今までの世界創造はその限界点に近づき、世界創造の第8日目を迎えて、これまでに停止していた世界創造が新たな段階として続行されなければならないということです。

 

  現代における「聖杯探求者」が、タロットの修練を通して行うミッションは「これ」です。タロットを学んで秘儀参入する探求者の目的も、「これ」です。聖杯探求の伝統の中では、これを「パーシヴァルの時代からプレスター・ジョンの時代へ」と呼んできました。「タロット王国」が行なっている作業のすべては、これに尽きるのであり、これ以外のことには基本的に関心を持たない。


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